<宿泊行事での夜の見回りの目的は?>

 私の教師生活のスタートは高等学校である。生活指導に苦労の多い学校であった。修学旅行で夜の見回りをする。その目的は何か。私が一番初めに思ったのは「タバコ」である。火の不始末から火事にでもなったらたいへんである。次が花札、トランプなどでの「賭けごと」である。無断外出もありそうだ。

しかし、先輩の教師から言われたのは「寝冷えさせない」健康管理であった。もちろん、喫煙や賭けごとなど、生活指導上の管理は大切である。しかしもっと大切なことは、親御さんから預かってきている子ども達の安全と健康なのである。先輩教師にそれを指摘された時、私は恥ずかしかった。子どもを信じ導くために教師になったはずであった。いつの間にか、目の前の喫煙、万引き、暴力など問題行動の対処に追われ、度重なる生活指導にばかり振り回されているうちに、教師としての原点を見失っていた。

 全員がちゃんと揃っているか、寝冷えしそうな様子はないか、体調不良の子は居ないか、それを見て回るのが夜の巡回なのである。小学校でも中学校でも、宿泊行事での巡回の本義を見失うことなく勤めたい。