<ベテランは新しいことへの対応が苦手です>

 教師文化伝承の妨げになっているのは、時間と年齢構成上の問題だけが原因ではない。50歳代の教師たちは、自信をもって自分達の教師文化を伝承するよりも、逆に若い世代に教えてもらうことが多くなっている。

 主にコンピュータなどのICT活用だ。昨今は、学年便りなどの各種文書の作成も、教材研究や教材作成でさえもがICT技術が欠かせない。変化の激しい社会にあって、教育に関する新しい情報もネットから手に入れることが多い。環境教育、国際理解教育(小学校英語活動)、情報教育、福祉教育、キャリア教育、自然体験、特別支援教育、心の教育などなど。つまり自分の専門教科やこれまでの教科の枠からはみ出た指導領域がどんどん追加され、学校や教師への期待が無限大に増加している状況なのである。
 新しいことへの対応は、年配教師はやはり若手の教師にかなわない。どちらかと言うと若手がリードして行われることが多くなる。
 
 このような状況の中で、ベテラン教師たちは自分達の身につけてきた教育観や教師観を、自信をもって語りにくくなっているのだと思う。本当は、そう言った新しい事象の基礎にある教育の原点や普遍的な教育観を、自信をもって伝えて欲しいのではあるが、現実には難しくなってしまっている。

 ここにも、学校文化、教師文化の伝承が途切れそうになっている要因がある。